免税フリーランサー向け|インボイス制度発行事業者になる業種別メリットデメリット
インボイス制度の導入によって悪影響を受けてしまう免税フリーランスの方は、どうしたら生き残っていけるのか?インボイス発行事業者になるメリットデメリットを解説いたします。
2023年10月から始まるインボイス制度によって、フリーランスや小規模事業者には悪影響が出ます。本稿ではインボイス制度が与える影響について簡潔にご紹介させていただきます。
今の段階ではお客様からも「インボイスって何かしなきゃいけないの?」と聞かれる程度であまり関心も高くないように感じます。
しかし、実はフリーランスのあなた!あなたの仕事がインボイス制度のせいでピンチに陥るかもしれません。
そうならないために、本稿ではインボイス制度が実際フリーランスの方にどのような影響を与えるのかご紹介させていただきます。
そもそもインボイスとは何かといえば、「適格請求書」と国税庁が名付けた請求書の一種です。
もともとEUで導入されていた消費税(EUでは付加価値税なんて呼ばれています)の管理方法で、実は日本でも学問の世界では10〜20年以上導入の議論はされてきていました。
簡単に言えば請求書に記載する情報を今より充実させる、程度のものです。
今までの請求書に加えて、追加を要求される事項も下記の程度です。
インボイス制度の詳細については、国税庁でわかりやすくまとめたもの発信してくれているので本稿ではご説明を割愛させていただきます。
ここまでの話では請求書のフォームちょっと変えなきゃな、くらいの話のように感じます。
ですが、実際にはフリーランスの方、外注で仕事を受ける業種の方(SE、ホステス、保険外交員)で売上が1,000万円に達していない方にとっては、このインボイス制度が導入されると、仕事の受注にも関わる大きな影響が出てきます。
今回はこのインボイス制度について、フリーランスの方目線でご紹介したいと思います。
「消費税のかからないフリーランスの方」はもちろん、「フリーランスや外注さんへ仕事を依頼している方」側にも影響がありますので、ご自身にも影響ないかご確認いただければと思います。
インボイス制度の内容を理解して、対策を考える上で国税庁が「何をしたくて」「何を狙って」こんな手間のかかる制度を導入するのか?そこに問題の本質があります。
なぜ従来の「請求書等保存方式」ではなく、新たに「インボイス制度」を導入する必要があるのでしょう。
背景にあるのは「軽減税率対応」と「免税事業者の益税の抑制」です。
インボイス制度導入の背景にあるのが「軽減税率への対応」です。令和1年10月の消費税増税により軽減税率が導入され、8%と10%、2つの消費税率が混在するようになりました。
それまでの税率は商品の種類に関わらず一律だったため、税額は簡単に算出できました。
しかし異なる税率の混在により、商品の仕入れや販売時の税額計算は複雑になってきています。この辺は実務の世界で私達会計事務所もかなり手を焼いています。
単一税率の時には手集計での計算も可能でしたが、複数税率になってからは税の専門家でもソフトなどの集計機能の助けがないとなかなか集計が困難になってきたのも事実です。
そこで国側もEUのインボイス制度を見習って正確な税額の管理をしよう、とインボイス制度導入へ舵を切ったのです。
消費者が事業者に支払った消費税の一部が納税されず、そのまま合法的に事業者の利益になってしまう仕組みを「益税」といいます。
例えば、SEのフリーランスの方が年600万円程度の収入で仕事している場合、従来の制度で言えば、1,000万円の売上に達していないので消費税を納める義務はありません。
しかし依頼主側は消費税込みで購入したという理解であるため、消費税の計算上、仕入れた消費税を経費として差し引いて計算しています。
つまり現状では下記のような構図になっています。
消費税免税のフリーランス→消費税をもらい得!
依頼主→払った消費税をきちんと引いて計算できるのでOK
国税庁→フリーランスがもらい得したことによって税金が取れていない!
そうです、この「もらい得」を排除することこそ、インボイス制度導入の最大の理由なんです。
では、国税庁は今のこの構図を、どう変えるでしょう?
シンプルに考えれば
消費税免税のフリーランス→消費税をもらい得!
得しているフリーランス、ここを是正するのが普通の感覚かと思います。消費税免税のフリーランスも全員消費税納税しなさい!といえば済むような気がしますね。
しかし、こうしてしまうと売上が年間10万にも満たない小規模な事業者も含めて、全て申告しなくてはいけない理屈になります。
そうなると、今の申告件数(業務量)が何倍にもなってしまうため、国税庁の側からしても現実的に導入しづらい方法となってしまいます。
そこで国税庁は申告件数(業務量)を極力増やさずに、国税庁が損している状況を改善するため、
こちらに調整を入れることを入れることにしました。
調整後は、依頼主側は消費税免税のフリーランスに対して払った消費税を「原則」引けなくなるで、依頼主の側が負担しなくてはならない、ということになります。
なお、「原則」という言葉を入れているのは下記の経過措置があるためです。
インボイス制度の経過措置概要 | |
---|---|
令和5年10月導入からの3年間 | 経過措置として、免税フリーランスへ払った消費税の80%部分は控除OK |
令和8年10月からの3年間 | 上記の「80%」が「50%」に縮小 |
令和11年10月以降 | フリーランスへ払った消費税は全て控除NG |
上記表の通り6年間は経過措置として依頼主への影響は軽減されるものの、6年経過後は免税フリーランスへ払った消費税は全て控除NGとなります。
このように、負担増の影響を免税フリーランス本人ではなく依頼主に追わせることにより、国税庁は効率的に益税(もらい得)を排除できる制度構築にしたわけです。
これこそがインボイス制度最大の目的といえます
では、上記のような制度導入後、依頼主はどうなるのか?
例えば免税フリーランスへ仕事を依頼している依頼主の立場でシミュレーションしてみます。
免税フリーランスへの年間依頼金額 600万円の場合 | ||||
---|---|---|---|---|
期間 | 消費税 | 控除率 | 控除額 | 結果 |
令和5年9月末迄 | 60万円 | 100% | 60万円 | これまで通り |
令和5年10月~3年間 | 60万円 | 80% | 48万円 | 12万円の損 |
令和8年10月~3年間 | 60万円 | 50% | 30万円 | 30万円の損 |
令和11年10月~ | 60万円 | 0% | 0円 | 60万円の損 |
このように表にまとめると一目瞭然ですね。
依頼主としては、同じ仕事を依頼するなら免税フリーランスよりもインボイス発行可能なフリーランスに発注したくなると思います。
または、依頼主が不当に背負わされている消費税分は価格を下げてくれと交渉してくるでしょう。
いずれにしても、免税フリーランスの方の収支は厳しいものになっていく事が予測されます。
当記事をご覧いただき感じられたと思いますが、インボイス制度の一番のターゲットは実は消費税免税フリーランスの方達だったのです。
場合によっては、免税フリーランスの方達は取引から排除される方向に向かっていく恐れすらあります。
インボイス制度は令和5年10月から導入されますので、免税フリーランスの皆さんはこれから取引先との取引継続のためにも検討・対策をとっていかなくてはいけません。
インボイス制度の導入によって悪影響を受けてしまう免税フリーランスの方は、どうしたら生き残っていけるのか?インボイス発行事業者になるメリットデメリットを解説いたします。
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